研究概要 |
最近、我々は二次元ゲル電気泳動による生化学的方法とモノクロナール抗体を用いた免疫組織化学的方法により毛包性腫瘍および非毛包性上皮性皮膚腫瘍におけるケラチン発現の特徴を検索した結果、デンシトメトリーによる定量的解析で、ケラチン16(K16)に比しケラチン17(K17)の優位な発現が毛包性腫瘍に特異的であるという結論を得、英文誌(Yoshikawa K et al,J Invest Dermatol 104:396-400,1995)に報告した。 今回の研究の目的は、従来表皮由来と考えられてきた脂漏性角化症と分化の方向に定説のない基底細胞癌について臨床、組織学的に毛包への分化が示唆される所見が存在するため、上記の結果を基に生化学的にケラチン分析を行い、両腫瘍が毛包性腫瘍の範疇に属するかどうか検討することである。 まず基底細胞癌に関しては、8例に対し生化学的、免疫組織化学的検索によりケラチン分析をおこなった。生化学的には1)K17の優位な発現、2)過増殖型ケラチンK6/K16の欠如、3)単層上皮型ケラチンK8とK19の高頻度の存在およびK7とK18の欠如、4)角化型ケラチンK1/K10の欠如、および5)重層上皮型ケラチンK5/K14の発現という結果が得られた。以上より基底細胞癌は未分化な毛包上皮へ分化していることが示唆され、さらにhair bulge(毛隆起)におけるケラチン発現(Akiyama M et al,J Invest Dermatol 105:844-850,1995)と一致していることから、基底細胞癌はhair bulgeへの分化を示す腫瘍であるという新知見が得られた。 さらに脂漏性角化症については、生化学的方法により50例のK16とK17の相対量を比較した結果、2/3の症例はK17の相対量が多く、残り1/3の症例は逆にK16が多いかほぼ同等であった。従って、脂漏性角化症はやや毛包性優位の毛包と表皮の両者への分化を示す腫瘍であろうという新たな結論が得られた。
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