研究概要 |
新生児包皮由来の正常ヒト表皮細胞をシャーレに培養し,充分増殖した時点で各種濃度のスフィンゴシンおよび膜透過型型セラミド(C2-セラミド)を添加し、経時的に細胞を回収し,RNAを抽出した.これをreverse-transcriptaseによりcDNAに変換した後polymerase chain reaction法により各種サイトカイン(インターロイキン-1α,-1β,-3,-5,-6,-7,-8,-10,-11,-12p35,-12p40;RANTES;MCP-3)の遺伝子発現の有無を検討したところ、スフィンゴシンによるサイトカインの誘導もしくは発現増強はなかったが、C2-セラミドによりインターロイキン-11およびRANTESの選択的発現増強を認めた。この効果はC2-セラミド添加後約6時間より認められ、24時間をピークとしていた。C2-セラミドと同様の効果はスフィンゴミエリナーゼ、インターロイキン-1β、天然型セラミド投与によっても引き起こされたが、スフィンゴシンの類似物質であるスフィンゴシン-1-燐酸、スフィンゴシルフォスフォリルコリン、ジメチルスフィンゴシンによってはおきなかった。即ち、インターロイキン-1βを介した正常ヒト表皮細胞の細胞学的活性化に、スフィンゴミエリナーゼ回路が介在し、セラミドがセカンドメッセンジャーとして働いている可能性が示唆された。我々は既に、スフィンゴミエリナーゼ回路が正常ヒト表皮細胞にも存在することをinterferon-γによる培養表皮細胞の接着分子intercellular cell adhesion molecule-1およびHLA-DR分子の発現の実験系を通して報告しており、表皮細胞の細胞膜上には燐脂質のみならずスフィンゴ脂質による情報伝達系が存在し、サイトカインの効果発現に関与していることが考えられた.
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