膠原病は皮膚、関節、血管、および内臓諸臓器を病変の主体の場とする全身性自己免疫疾患である。申請者は軽症型強皮症の血清学的マーカーとされる抗セントロメア抗体(ACA)を用いてセントロメア抗原の同定、セントロメア蛋白の構造と機能の解析、疾患特異性の検討を行ってきた。ACA陽性血清のみに共存する抗クロモ抗体はACA陽性患者の中で全身性エリテマトーデスヤシェグレン症候群といった他の膠原病の特徴を合わせ持つ血清学的マーカーとなりうる事を既に報告した(研究業績1)が、クロモ抗原のひとつp25のcDNAを用いたエピトープ解析により大部分の抗体はクロモドメインと呼ばれる種において保存されている領域を認識し、ほぼ同等の陽性率でクロモシャドウドメインと呼ばれるもうひとつの保存領域もエピトープとなっていた(研究業績2)。またそれぞれのエピトープとの反応性が、ACA陽性患者の中で特定の検査所見や臨床像と関連を有していたことはさらに抗クロモ抗体のACA陽性患者における臨床的重要性を示している。また強皮症様皮膚硬化を伴った骨髄移植後の慢性移植片対宿主病(GVHD)患者血清中に、細胞周期に関連するセントロメア抗原蛋白のうちのひとつCENP-Fに対する抗体が存在したことをcDNAクローニングにより明らかにした一例を報告した(研究業績3)。CENP-Fに対する抗体に関する報告は数少なく、またGVHD患者では世界で初の報告である。強皮症とセントロメア抗原の関連、GVHDにおける自己免疫のエフェクターとターゲット、自己免疫の誘導などを考察する示唆に富んだ症例と考えられる。
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