本研究は紫外線照射に対する細胞応答のメカニズムの解析を企図して行われている。モデル系として、細胞周期や遺伝子発現の調節機構がヒト細胞と類似しており、遺伝学的操作の容易な分裂酵母Schizosaccahomyces pombeを採用している。はじめに、予備実験において単離した多数のS.Pombe紫外線超感受性株の種々の形質を分析した。温度感受性など特異な形質を示している変異株を選び、この形質が単一遺伝子の変異によることを確認した。紫外線超感受性株は、excision repairの欠損群、recombinational repairの欠損群、G2 checkpointに異常のある群、mismatch repairの欠損群、などにわけられる。本研究において現在解析中の変異株は、細胞周期調節機構に異常のある可能性がある。現在、この形質を相補する遺伝子のクローニングを行っている。S.pombe野生株の染色体から作成したプラスミッドライブラリーにより変異株をトランスフォームし、レプリカ法を用いてスクリーニングをおこなった。その結果、数万個のコロニーの中から紫外線や温度に対する感受性が回復しているコロニーが多数得られた。そのうち、プラスミッドの脱落と共に回復した形質が失われることが確認された約30個の株よりプラスミッドを回収し、現在そこに含まれている遺伝子断片の解析を行っている。複数の異なった遺伝子が得られている可能性があり、変異遺伝子その自体のほか、いわゆるマルチコピーサプレッサーが得られていることが期待される。本研究に関連して、第90回日本薬理学会近畿部会において報告をおこなった。以上述べたように、本研究は極めて順調に進展していっており、十分な成果が期待できるものと考えている。
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