1 蛋白の3次元構造を保持したままの検索が可能な免疫沈降法は、有用な抗原解析法の1つであるが、使用に制限のある放射性同位元素(RI)を用いなくてはならない。そこで我々は一般の研究室でも簡便に行い得る、RIをもちいない免疫沈降法、銀染色法とビオチンラベル法を行い、自己免疫性水疱症に対する従来の免疫ブロット法と比較した。 2 既知の自己免疫性水疱症と、我々が経験した、200KD真皮蛋白に対する血中IgG抗体を有し、臨床像も既知疾患と異なる新しいタイプの水疱症の血清を研究対象とした。 3 銀染色法では、培養表皮細胞をRIでラベルせず蛋白を抽出し、感度の高い銀染色で沈降蛋白を検出する。ビオチンラベル法では、培養表皮細胞をビオチンラベルし、蛋白抽出、沈降を施行、ニトロセルロース膜に転写後アビジン-ビオチン法にて沈降蛋白を検出する。それぞれについて以下の結果を得た。 4 類天疱瘡血清は銀染色法にて全例230kD蛋白との反応のみ呈した。免疫ブロット法では60%が230kD蛋白と、50%が180kD蛋白と反応した。尋常性天疱瘡血清は、免疫ブロット法同様、両法にて130kD蛋白との反応を呈したが、銀染色法では反応は弱かった。Paraneoplastic pemphigus血清は、銀染色法では免疫ブロット同様130、190、210、230、250kD蛋白との反応がみられたが、ビオチンラベル法では130kD蛋白との反応のみみられた。後者は細胞外に存在し病因的により重要と思われる抗原を検出するので、尋常性天疱瘡抗原が病因的に何らかの役割を果たしている可能性がある。また前述の新しいタイプの水疱性については、表皮細胞を200kD蛋白の分泌細胞と想定し銀染色法にて免疫沈降を施行したが、反応は認められなかった。技術的な限界によるのか、表皮細胞は真に分泌細胞ではないのか更に検索を進めたい。また今後各種培養細胞由来のcDNAライブラリーを用いた抗原蛋白のクローニングなども考慮中である。
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