ヒト大腸癌LS-180移植ヌードマウスにおいて、アンギオテンシン-IIによる昇圧操作に基づく腫瘍血流増加作用およびキニナーゼ阻害剤(エナラプリル)による血管透過性亢進作用を利用し、放射能標識モノクローナル抗体の腫瘍集積性の改善が得られるか検討した。TI-201塩化タリウム、Tc-99m標識アルブミンを組織血流量、組織血液量あるいは血管透過性のマーカーとして、アンギオテンシン-II、エナラプリルの至適投与量を検討した結果、各々2μg/kg/min、30μgの投与量において最適の腫瘍血行動態改善が得られた。この操作により血圧は、96/61から153/67に上昇した。昇圧操作を72時間まで持続し観察した結果、1時間までの昇圧であれば正常臓器血行に影響がないことが確認された。このように決定した最適操作下におけるIn-111標識抗大腸癌モノクローナルA7抗体の体内分布を抗体投与後168時間まで観察したところ、腫瘍への放射能集積は対照群と比べ有意に増加し、かつ正常臓器放射能分布は減少した。投与72時間後における腫瘍集積は対照群の1.62倍の高値を示した。腫瘍内放射能分布をオートラジオグラフィで観察したところ、対照群では放射能は主に腫瘍辺縁にのみ存在したのに対し、操作群においては腫瘍深部にまで放射能の分布がみられた。 以上の結果から、アンギオテンシン-IIおよびキニナーゼ阻害剤投与による腫瘍血行動態の改善により、放射能標識モノクローナル抗体の腫瘍集積性の改善が得られることが確認された。操作法の改良により、より高度の改善が得られるものと考えられる。
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