研究概要 |
子宮筋腫の変性の種類を鑑別するためにMRIと病理組織の比較検討を行った。摘出予定である子宮筋腫16例20個においてT1強調像、T2強調像、ガドリニウム造影T1強調像を撮影した。また摘出された筋腫を1cm角に切断し、それぞれの部分で正常筋腫細胞、ヒアリン変性、嚢胞性変性、脂肪変性、壊死、石灰化の有無を確認し、病理学的マップを作成した。 比較検討の結果、径1cm以下の筋腫を除き、ほとんどの筋腫で各種の変性が認められた。初期の変性では組織学的に軽度の浮腫のみ認められた。このような初期の変性はT1,T2強調像ともに変性のない筋腫と輝度は変化なかったが、ガドリニウムにて造影の増強が認められた。さらに進行しヒアリン変性、嚢胞性変性、脂肪変性、壊死、石灰化等強い変性を伴う場合にはガドリニウムにてごく軽度造影されるのみであった。また嚢胞性変性はT1強調像で低輝度、T2強調像で高輝度、脂肪変性は化学シフトを伴いT1,T2強調像ともに高輝度でともに造影されなかった。壊死はT1,T2強調像ともに不均一な高輝度を呈し、周辺のみで不均一に造影されていた。ヒアリン変性はT1,T2強調像ともに低輝度で、わずかに造影されるのみであった。石灰化もT1,T2強調像ともに低輝度であったが、全く造影されなかった。 MRIにて筋腫における各種の変性は診断可能であった。特にガドリニウムの造影程度は変性の強さを反映しており、変性の強い筋腫ほど造影されにくかった。このようにMRIは変性の程度を把握するのに有用であり、薬物療法の効果を予測するのに役立つと考えられた。
|