目的および対象:同一施設に3ケ月以上入所し、消灯時刻(2100〜0600時、夜間時間帯)食事時刻、室温などの同調因子を一定に設定したアルツハイマー型老年痴呆患者8名(平均年齢【.+-。】SD、73.6【.+-。】10.3)を対象として、本疾患での睡眠・行動障害に対するメラトニン補充療法の治療効果をプラセボとのdouble-blind cross-over designにて検討した。方法:導入観察期(7日間)の評価で、活動・休止リズム障害が認められたアルツハイマー型老年痴呆患者に対して毎日午後9時に0mg(プラセボ)もしくは9mg量を経口的にそれぞれ28日間にわたり投与した。試験の全期間中にわたり、非利き腕に取付けたアクチグラフにより、全方向への0.01G以上の重力加速頻度数を連続測定し(epoch time;1分)、活動・休止の時系列データとした。導入観察期、メラトニン投与期、およびプラセボ投与期の各期の最終日に、静脈内持続留置カテーテルを用いて、2時間おきに24時間にわたり無痛採血を行い、radio-immuno assay法により血清中メラトニン濃度の経時的変化を評価した。結果および考察:メラトニン補充療法はプラセボ投与時に比較して、アルツハイマー型老年痴呆患者の夜間活動量および夜間活動量比率を有意に減少させることで睡眠・行動障害を改善させた。一方、昼間活動量および総活動量には有意な変化は認められなかった。メラトニン投与28日目の血中メラトニン濃度ピークは、投与1時間後に3980pg/mlと高値を示したが、投与17時間後の1400時には生理的濃度水準まで速やかに低下した。今後、至適投与量および投与時刻の決定が必要である。
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