研究概要 |
精神分裂病の病因、病態を研究するために、ヒトに精神分裂病様の精神症状を惹起するフェンサイクリジン(phencyclidine,PCP)のセロトニン(5-HT)トランスポーターへの薬理作用を検討した。 1.予備実験として、5-HTトランスポーターへの[^3H]paroxetineの結合にPCPが与える影響を検討した。Wistar系雄性ラット(180-220g)の大脳から作成したシナプトソーム分画に、[^3H]paroxetine結合を行い、PCPとその代謝産物がどのように結合を阻害するかを調べた結果、PCPはIC_<50>値が3.0±0.21μMと極めて強く結合を阻害し、PCPは5-HTトランスポーターに対して強い親和性を有することがわかった。 2.PCPが5-HT系に作用することを確認するために、Wistar系雄性ラットにPCP(7.5mg/kg)を14日間連続投与し、行動の変化を対照群と比較した。その結果、PCP投与群は対照群に比して有意に行動量が増加していた。また5-HT系による異常行動である、backpedaling,head twich,head weavingなどが認められた。このことから、PCPはドーパミン系のみならず、5-HT系による行動の異常を惹起することが確認された。 3.PCPの慢性投与群と対照群の最終投与の24時間後にラットを断頭し、取り出した大脳のシナプトソーム分画を用いて5-HTトランスポーターに対する[^3H]paroxetineの結合実験を行った。現在そのScatchard解析を行っており親和性(Kd)と結合量(Bmax)を群間で比較し、PCPの慢性投与により、ラット大脳の5-HTトランスポーターの変化がどのように変化したかを今後検討する。
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