研究概要 |
本研究において以下の結果を得た。 1)ラット小脳の発達における、Cdk5,p35^<nck 5a>の発現、活性および細胞内の局在の変化について検討した。Cdk5の発現は、新生時からアダルトにいたるまで差が認められなかった。一方、p35^<nck 5a>の発現は新生時に高く、その後成長とともに低下した。また、発育におけるCdk5の活性の変化は、p35^<nck 5a>の発現の変化と一致した。 Cdk5の神経細胞内の局在は、小脳の発育に伴って変化した。Cdk5の活性の高い新生時では、細胞体に存在したが、活性が低いアダルトにおいては、軸索に移行した。一方、p35^<nck 5a>は、常に細胞体に存在した。 2)アルツハイマー病脳におけるCdk5の活性および神経細胞内の局在について検討した。活性は、コントロールヒト脳と比較して、有為な差は認められなかった。一方、細胞内の局在は、コントロールヒト脳では、白質すなわち軸索に発現が認められたが、アルツハイマー病脳では、細胞体あるいは神経原繊維変化がみられる部位に発現を認めた。 以上のことより、Cdk5の神経細胞内の局在が軸索から細胞体に移行することが、酵素の活性を制御するメカニズムとして重要であることが示唆された。また、アルツハイマー病において、Cdk5の局在の変化が病態と密接に関与していると考えられるため今後さらに解析を進めていく予定である。
|