研究概要 |
精神分裂病の原因については、以前よりドーパミン過剰説が提唱されているが、未だ不明である。一方、NMDA型受容体はグルタミン酸受容体の一つであり、精神疾患との関連が注目されている。ドーパミン系とグルタミン酸系には相互作用のあることが明らかにされつつあり、ドーパミン受容体刺激作用をもち、精神分裂病様症状を発現させる薬剤のNMDA型受容体に対する作用を調べる目的で実験を行うこととした。その前段階としてラットにおいてノーザンブロット法を用い、逆にドーパミン受容体阻害作用をもつ抗精神病薬である、ハロペリドールおよびスルピライドの急性および慢性投与を行い、NMDA型受容体のmRNAの変化について検討した。これらの抗精神病薬および対照として生理食塩水を投与したWistar系ラットの全脳を2時間後に取り出し、total-RNAを抽出。NMDARI(NR1)、NR2A、NR2B、NR2Cそれぞれの合成ヌクレオチドプローブを^<32>Pで標識、ノーザンブロット法により各サブユニットのm-RNAを検出し定量化した。その結果、ハロペリドール慢性投与によりNR2A,NR2Bのm-RNAの発現量が有意に増加した。また、スルピライド急性投与により、NR2A、NR2Bのm-RNAの発現量が有意に減少し、一方、慢性投与において、NR24Am-RNAの発現量が有意に増加した。今回の結果から、抗精神病薬はNMDA型受容体のうち主にNR2A、NR2Bに作用すること、また、急性および慢性投与により、その薬理作用は全く異なる可能性のあることが示唆された。以上の結果について、Neurochemical Research誌において報告した。現在、精神分裂病様症状を発現させる薬剤についての実験を行っており、脳内での詳細な変化を観察するためにIn situ hybridization法を用いて、これらの薬剤の脳内NMDA受容体に及ぼす影響について検討する。
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