酸素ラジカルであるスーパーオキサイドは、各種疾患を誘起もしくは増悪させることが知られており、生体中のスーパーオキサイドの測定は重要である。スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)はスーパーオキサイドの特異的な消去酵素であり、生体内でスーパーオキサイドを自然不均化速度より速く、過酸化水素と酸素分子に分解する。ゆえに、SOD修飾電極はスーパーオキサイドからSODによって変換される過酸化水素を定電位電解することにより、スーパーオキサイドの定量を可能にする。しかし、SOD修飾電極は電極マトリクス外に存在する過酸化水素も同様に電解する。従って、生体内のような夾雑系でスーパーオキサイド電極として使用する場合、マトリクス外の過酸化水素を排除する機能が要求される。そこで本研究では過酸化水素分解酵素であるカタラーゼをSODと複合的に修飾した微小電極を作成した。この電極の電気化学的特性を検討したところ、過酸化水素除去能とスーパーオキサイド感受性を併せ持つことが示された。さて、高濃度酸素暴露下において脳内のスーパーオキサイドが増加することが示唆されているが、未だ間接的な証拠しか報告されていない。そこで、本電極のin vivo応用として、電極をラットの線条体に植え込み、高濃度酸素(1気圧100%酸素)にラットを30分暴露し、脳内のスーパーオキサイド濃度の変化を無麻酔無拘束下で経時的に計測した。高濃度酸素暴露は有意なスーパーオキサイド濃度の上昇をもたらした。本研究の結果は、今回開発された電極が脳内のスーパーオキサイドをin vivoで計測する有効な手段であることを示している。
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