研究概要 |
増殖因子の作用発現においてカルシウムイオンは必須の役割を果たしているが,その流入経路すなわちカルシウムチャネルの本体は不明で,その活性調節機構も明らかでない.本研究では細胞増殖に関与することが確かめられたカルシウムチャネル分子CD20を遺伝子導入により過剰発現させたBalb/c3T3細胞を作製し,今まで解析が困難であった増殖因子受容体によるチャネル活性化の分子機構を分子生物学的および電気生理学的手法を用いて明らかにすることを目的とした. その結果,CD20チャネルはインスリン様増殖因子-1(IGF-1)によって活性化されそのカルシウム透過性が亢進するが百日咳毒素(PTX)処理によりこのIGF-1の活性化作用は完全に消失すること,一方GTP結合蛋白を直接的に活性化するマストパランやconstitutively active G蛋白変異体であるGip2の共発現によりこのチャネルが強く活性化されることなどから,CD20がPTX感受性GTP結合蛋白を介して活性化されていることを明らかにした(Kanzaki et al. J.Biol. Chem. 272:4964-4969).またIGF-1によるCD20チャネルの活性化には細胞内にGTP,Mg2+に加えATPが必要であるが,一方GTP結合蛋白を直接活性化するマストパランやconstitutively active変異体Gip2の共発現によるCD20の活性化にはATPは必要でなかった.これらのことからATPはIGF-1受容体がGTP結合蛋白を活性化するステップに重要であることを明らかにした.またこのATPは非水解性ATPアナログであるAMP-PNPによって置き換えることができることから蛋白のリン酸化は関与しないと考えられた(投稿中).
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