研究概要 |
われわれは既にラット血中および組織液中にIGF-Iから、IFG結合蛋白(IGFBP)に対する結合親和性が低いためintact IGF-Iに比し生物活性の高いdes(1-3)IGF-Iを生じる蛋白分解酵素(N端IGF-Iプロテアーゼ)の存在することを報告し、プロテアーゼ活性測定法を開発した。 今回の研究では、ヒト血中N端IGF-Iプロテアーゼ活性について、測定法の再現性、時間・温度・pH依存性、分子量、加齢による影響、急激な血糖値の変化による影響の検討を行った。測定法は既報(Endocrinology135:2432-2440,1994)に従い、ほぼ良好な再現性が得られた(intraassayのCV値6.5-15.0%、interassayのCV値5.2-12.1%)。ヒト血中N端IGF-Iプロテアーゼ活性の性質は、時間、温度(至適;37℃)、pH(至適;5-6)依存性を示し、これらの性質はラットのプロテアーゼ活性と類似していた。ヒト血清をSephacryl S-200カラムでゲル濾過した場合のプロテアーゼ活性は、分子量30-50kDaに相当する分画に認められた。健常成人において、血中N端IGF-Iプロテアーゼ活性は加齢に伴い減少し(y=-0.209x+52.2,r=0.276,p<0.01;N=83)、血中総IGF-Iレベルと正の相関(y=0.076x+32.6,r=0.369,p<0.001;N=81)を示した。またヒト血中N端プロテアーゼ活性はインスリン低血糖により低下したが、ブドウ糖経口投与では変化しなかった。さらに^<125>I標識IGF-Iと^<125>I標識des(1-3)IGF-Iをヒトならびにラット血清とインキュベート後に、IFGBPに対する結合親和性をカラムクロマトグラフィーを用いて比較検討した結果、ヒト血中のIGFBPはdes(1-3)IGF-Iに対して、ラットより高い親和性を有し、50kDaのIGF-IGFBP complexを形成することが明らかになった。 これらの成績は、ヒト血中にはN端IGF-Iプロテアーゼにより切断されたdes(1-3)IGF-Iがラット血中より高率に存在する可能性を示唆する。ヒト血中においてdes(1-3)IGF-IがIGF-Iの作用に与える影響については、今後さらに検討を要する。
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