研究概要 |
本研究の目的は、インスリン依存型糖尿病(IDDM)の候補遺伝子がどのようにIDDM発症機序に関与しているのか、そして各々の遺伝子の関連の度合いの相違が、IDDMの病態の多様性を規定しているのかどうかをassociation studyによって明らかにすることである。 対象は、30歳未満で発症したIDDM症例のうち抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体陽性54例と抗GAD抗体陰性19例、及び健常者50例である。抗GAD抗体値はRIA法により測定、5U/ml以上を陽性と診断した。同時にDNAを抽出し、PCR-RFLP法を用いてIDDM1(HLA-DQA1,QB1遺伝子)のタイピングを行った。IDDM2、IDDM4遺伝子は近傍に存在する遺伝子マーカーの遺伝子型をPCR-RFLPs法とPCR-microsatellite法により検討した。この3つの候補遺伝子に関して、抗GAD抗体陽性群、抗GAD抗体陰性群と健常群間でのassociation analysisを行った。 結果は、抗GAD抗体陽性群はDQA1^*0301のホモ接合とDQB1^*0302と^*0401を有意に多く認め、抗CAD抗体陰性群はDQA1^*0301のヘテロ接合とDQB1^*0302を有意に多く認めた。IDDM2においては、患者群は健常群と遺伝子型のパターンの頻度において有意差を認めたが、抗GAD抗体陽性群と陰性群間には有意差を認めなかった。IDDM4においては抗GAD抗体陽性群、陰性群、健常群間に有意差を認めなかった。 抗GAD抗体陽性群と抗GAD抗体陰性群の遺伝的associationの差はIDDM1に認めたが、IDDM2,4には認めなかった。 以上より、抗GAD抗体陽性に関与する遺伝子はIDDM1であり、IDDM1の遺伝子型が臨床的な特徴のsubtypeと対応している可能性が示唆された。IDDMを発症させるための候補遺伝子間の関係に関しては、3つの遺伝子には認められなかった。今後、この関係を明らかにするために、さらに多くの症例に対し検討し、他の候補遺伝子との関係も調査する必要がある。
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