研究概要 |
染色体異常t(8;21),inv(16)をともなう急性白血病では、この染色体異常のためにそれぞれAML1/MTG8,PEBP2/MYH11といった新しい融合遺伝子が生成される。まず、これらの融合遺伝子をトランスジェニックマウスの血液細胞で特異的に発現させるためにはどのプロモーターを用いるのが良いかを比較検討した。プロモーターの下流にレポーター遺伝子としてlacZ遺伝子をつないだコンストラクトを作成しES細胞に導入し解析した。ES細胞はマクロファージの増殖因子であるM-CSFを欠損しているストロマ細胞OP9と共培養することで比較的簡単に血液細胞まで分化させることが可能である。すべての細胞で発現することが知られているEF-1のプロモーターを用いた場合、導入したES細胞クローンの1/4でES細胞全体に強く発現するクローンが得られた。さらにこれらのES細胞をOP9上で血液細胞まで分化させてその発現を単球、赤芽球、巨核球系で解析した。すべての細胞系列でlacZ遺伝子の発現が見られたが、ES細胞と違いその発現は血液細胞の50%ほどにとどまり、すべての血液細胞で発現しているクローンは得られなかった。次に巨核球系細胞で特異的に発現するGpIIbのプロモーターを用いて同様の実験を行った。ES細胞での発現が見られないにもかかわらず、分化誘導で得られた巨核球に特異的に発現するクローンを数多く得ることができた。これらの結果よりトランスジェニックマウスに用いるプロモーターは慎重に選択する必要があることが判明した。現在どのプロモーターがよりよく血液細胞で遺伝子を発現させるのに適しているかさらに研究をすすめている。またすでに解析したEF-1プロモーターについてはその下流にAML1/MTG8融合遺伝子をつないだコンストラクトを作成してマウス受精卵に導入する研究も同時にすすめている。
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