研究概要 |
目的 成人T細胞性白血病(Adult T-cell leukemia,ATL)はヒトレトロウイルスであるhuman Tlymphotropic virus type I(HTL V-I)感染成熟CD4陽性T細胞性の極めて難治性の腫瘍である.本研究ではATL細胞の腫瘍化や増殖機構等の疑問に迫るため,成熟リンパ球が関与する様々な免疫反応の場として重要であるリンパ節に着目し,研究実施計画に則り解析を行なった. 結果 1.ATL及びその他のリンパ増殖性疾患患者よりリンパ節stromal cellsの作製を試みたところ,ATL由来のstromal cellsは1年以上維持可能であったが,その他の疾患由来のstromal cellsは数カ月で増殖を止めた. 2.PCR法を用いた解析により,ATLリンパ節stromal cells約100個当たり1個の割合でHTLV-Iの感染が認められた. 3.ATLリンパ節stromal cellsのサイトカイン産性能について検討したところ,複数のサイトカイン(M-CSF,G-CSF,GM-CSF,TNFα,LD78,IL-6及びIL-8)の産生を認めた. まとめ リンパ節stromal cellsがATL患者リンパ節より得られたが,他のリンパ増殖性疾患からは得られなかった.このsromal cellsには約100個当たり1個の割合でHTLV-Iが感染しており,また,リンパ球に作用し得るものを含む複数のサイトカインの産生をも認めた.これらの結果はATL細胞がリンパ節においてstromal cellsとの相互作用を通じて増殖している可能性を示唆している.このstromal cellsはATL細胞の増殖機構等の疑問を解析するのに有用な材料となると考えられる.
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