研究概要 |
蛋白尿惹起性モノクローナル抗体(mAb)5-1-6認識抗原p51のクローニングのため、まずラット糸球体libraryを作成した。p51の成熟ラットでの合成は極めて微量で、まだ糸球体形成が続いている幼若ラットでは活発な合成があることをmetabolic labelingの系で証明しているので、生後1日令ラット糸球体からmRNAを抽出し、λexloxベクターでのlibrary、COScell expresion用のpcDNAベクターを用いたlibraryを作成し、それぞれ300万cloneをscreeningした。一次、二次screeningで3個の陽性cloneを分離し、現在sequencing、homology検索を続けている。p51は、peroxidaseを用いた免疫電顕法で糸球体上皮細胞足突起表面、並びに足突起間に分布しているのが証明されているが、より正確に局在を同定するため金粒子を用いた免疫電顕法でその局在をZO-1と比較し、半定量的検討した。ZO-1 は足突起側部表面のスリット膜が突き出る点に局在するのに対し、p51は主に足突起間(2.14コ金粒子/μm基底膜)に存在し、スリット膜上に線状に分布しているのを観察した。 また蛋白尿の発症メカニズムをin vivo並びに単離糸球体を用いたex vivoの系で検討した。mAb5-1-6による蛋白尿発症時、p51並びに、ZO-1の発現量が著明に減少していること、そしてこれらの変化はtyrosinのリン酸化を伴わない現象であるということを免疫組織学的手法、Western blot法で証明した。またこれらの分子の変化は、Ca^<++>dependentのcalmodulin-cytoskeltonを介した現象であることを証明した。 今後は、p51のクローニングを続け、p51,ZO-1発現低下のメカニズムをex vivoの系でより詳細に検討していく予定である。これらの分子の動態の詳細な検討は、蛋白尿発症機序の解明のみならず、未だ未解決な部分の多いスリット膜の構造、機能の解明につながるものと考えられる。
|