伴性低リン血性ビタミンD抵抗性くる病(XLH)や良性腫瘍を持つ患者では、著しい低リン血症やビタミンD代謝異常を呈する。これらは、主に腎近位尿細管におけるNa依存性リン輸送担体(NaPi)の活性低下が原因である。また、XLHの動物モデルであるHypマウスを用いた解析から、低リン血症の病因には、NaPi遺伝子の発現量を抑制する因子が関与していることが示唆された。これは最近、Econsらが示した低リン血症を誘導する液性因子(Phosphatonin)である可能性が考えられる。しかし、Phosphatoninは良性腫瘍を持つ患者の血清中にその存在が確認されているものの、同定に至っていない。そこで、本研究ではXLHおよび良性腫瘍患者血清からNaPi3遺伝子発現を抑制する因子の検出を試みた。 まず、NaPi-3遺伝子の転写開始点上流2.4kbをルシフェラーゼ遺伝子をもつリポーターベクターに連結し、DEAEデキストラン法を用いて、腎尿細管由来のOK細胞にトランスフェクションした。その後、48時間、正常、XLH患者、良性腫瘍患者血清およびHypマウスの血清存在下で培養した後、細胞を回収しルシフェラーゼ活性をルミノメーターにて測定した。その結果、各血清間で有意な差が認められなかった。また、NaPi-3を発現させた卵母細胞を用いて同様に各血清のリン輸送活性に及ぼす影響について検討したが、同様に有意な差が認められなかった。 一方、XLHの原因遺伝子PEXが同定されたが、本遺伝子異常とNa/Pi輸送活性低下との関連性は不明である。そこで、Hypマウス各組織よりRNAを抽出し、RT-PCR法を用いてPEX遺伝子の増幅を行なった結果、脳、精巣、骨に発現が確認されたが、腎では見られなかった。すなわち、PEX遺伝子異常が腎尿細管リン輸送活性を直接障害しているとは考えられず、PEXとPhosphatoninの関連性について検討するためにも、Phosphaoninの同定が必要である。
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