アルドステロンによる血管平滑筋細胞Na^+-H^+交換輸送体への影響を検討した。SDラットの胸部大動脈より酵素法にて中膜平滑筋細胞を単離培養後、継代数10代以下の細胞を実験に用いた。細胞内pH(pHi)測定用蛍光色素であるBCECF/AMを用いて細胞内を酸性化した後のpHi回復速度(dpHi/dt)を測定しNa^+-H^+交換輸送体の活性を解析した。細胞内酸性化後のdpHi/dtは、Na^+-H^+交換輸送体の阻害薬であるEIPAにてほぼ完全に抑制され、一方、アルドステロン1μMによりコントロール群と比較してdpHi/dtは3時間後より上昇し始め、24時間後もその増加が持続された。血管平滑筋細胞Na^+-H^+交換輸送体の活性化を示すdpHi/dtの上昇は、3時間負荷(短時間負荷)ではミネラルコルチコイド受容体および蛋白合成を介さずに、一方、24時間負荷(長時間負荷)では受容体および蛋白合成を介して起こることが判明した。また、両者ともプロテインキナーゼCの活性化に依存性がみられた。このようにアロドステロンは血管平滑筋細胞においてNa^+-H^+交換輸送体を短時間負荷と長時間負荷で異なった機序により活性化し血管機能に影響を与えることが示唆された。
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