家兎肺動脈の内皮細胞の細胞内Ca濃度と細胞内pHを測定した.また、低酸素とアシドーシスが与える影響について研究した.さらに内皮細胞のCaやpHを測定するとともに、肺動脈の平滑筋細胞の収縮を測定した. 内皮細胞標本:内皮細胞は、肺動脈に付着したままの内皮細胞と、初代培養内皮細胞(4-7日培養)を用いた.胎生28日(満期は31日)の妊娠家兎を帝王切開し胎仔をとりだした.胎仔から肺動脈を摘出し、血管から内皮細胞を分離した.一部は培養し、一部はすぐ実験に用いた. 血管内皮細胞に蛍光色素Fura-2やBCECFを取り込ませ細胞内Ca濃度やpHを測定した.また血管の内皮面をスライドグラスに密着させることで、血管に付着したままの内皮細胞のCa濃度を測定できた. 結果:内皮細胞のCa濃度はコントロール状態で60nMであった.血管に付着したままの内皮細胞のCa濃度と初代培養の内皮細胞では有意差はなかった. 1)低酸素状態から酸素を投与した場合、内皮細胞の細胞内Ca濃度は低下した. 2)アシドーシスにした場合、内皮細胞の細胞内Ca濃度は一過性に低下し、その後上昇した. 3)低酸素、アシドーシスともに細胞内pHは低下した. 内皮細胞のCaやpHを測定するとともに、肺動脈の平滑筋細胞の収縮を測定した. 低酸素で肺動脈は収縮し、酸素で弛緩した.アシドーシスで肺動脈は弛緩した. 以上の実験から、肺動脈の低酸素での収縮、アシドーシスでの弛緩、ともに内皮細胞の細胞内CaとpHが重要な役割を果たしていると考えられた.
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