早期胃癌に対する内視鏡的治療や縮小手術の適応を考察する際に問題となるリンパ節転移を予測するため、新たな因子として胃粘膜下層浸潤癌(sm癌)の粘膜下層への浸潤の程度を細分類し検討した。すなわち粘膜下層の粘膜筋板下縁から固有筋層上縁までの距離を3等分して管腔側からそれぞれ浅層:sm1、中層:sm2、深層:sm3とし、さらにsm1については、粘膜筋板より固有筋層側へ300μmまでのごくわずかな範囲の粘膜下層にのみ浸潤を認めるものをsm1-α、それ以上のものをsm1-βとして2つに区分した。当教室で経験したsm癌切除症例235例を以上の細分類により検討すると、浸潤度sm1-αで腫瘍径30mm以下のもの、sm1-β、sm2の10mm以下のものおよび30mm以下のsm1-βで腫瘍先進部の組織型が高分化型ly(-)Ul(-)のものにリンパ節転移を認めず、この範囲のsm癌に対して根治的内視鏡的切除術の適応拡大の可能性が示唆された。 一方、癌関連遺伝子の一つであるp53遺伝子の異常がp53蛋白の核内異常蓄積としてとらえられ、しかも癌の病期や進行度、予後と密接に相関していると注目されている。このような観点から表層拡大型胃癌と小型浸潤進行胃癌のp53蛋白の異常発現について検討を試みた。当教室で経験した表層拡大型胃癌(直径5cm以上、m癌)29例と小型浸潤進行胃癌(直径2cm未満、mp以上浸潤)12例を対象としp53蛋白の異常発現を検討した結果、表層拡大型胃癌と小型浸潤進行胃癌との間にはp53蛋白発現の有意差は見られなかった。またp53蛋白の発現とリンパ節転移との関係も認められなかった。 現在は胃sm癌の細分類とp53蛋白の発現の関係について検討中である。
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