研究概要 |
われわれは、ヒト胃癌細胞株NUGC-4に分化誘導剤であるDMSOを添加培養することにより、癌の血行性転移において重要な接着分子であるsialylLe^xの発現が著明に増強し、実際にsialylLe^xとIL-1で活性化したヒト血管内皮細胞上に発現するELAM-1を介した接着が増強する事を見いだした。 今回の実験で我々は、以下の結果を得た。 (1)ヒト大腸癌細胞株HT-29においてもNUGC-4と同様にsialylLe^xの発現が増強した。 (2)HT-29においてはDMSOだけでなくTPAによっても同様にsialylLe^xの発現増強が引き起こされた。 (3)HT-29においては他の分化誘導剤ではsialylLe^xの発現増強は認められなかった。 (4)HT-29におけるsialylLe^xの発現増強はProtain Kinase C阻害剤との共培養によって完全に抑制された。 (5)この現象はHT-29に特異的で、ヒト大腸癌細胞株COLO205,COLO320DMやヒト胃癌細胞株MKN28では認められていない。 以上の結果より、ある種の癌細胞株においては、sialylLe^xの発現にProtain Kinase Cが関与している可能性があり、今後同細胞株における各種糖転移酵素活性の変化について検討する予定である。
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