研究概要 |
臨床的肝切除症例40例(A群:障害肝群20例,B群:非障害肝群20例)の,周術期(術前,術後第1,3,7,14,28病日)における,HGF(Hepatocyto Growth Factor),IL-6(Interleukin-6),白血球,好中球,CRP,GOT,GPT,ICG-R15,AKBR,ChE等を測定し,その変動パターンと各パラメーター間の相関関係を求めた.対照群としては,胃切除症例(C群:12例)を用いた。血中HGFの術前値はA群0.42【plus-minus】0.09,B群0.28【plus-minus】0.02,C群0.24【plus-minus】0.01ng/mlであった。各群ともに術後1日目に有意なピークがみられ,それぞれA群076【plus-minus】0.10,B群1.14【plus-minus】0.30,C群0.56【plus-minus】0.12ng/mlで,A,B群ともにC群よりも有意な高値を示した(p<0.01).A-B群間に有意差を認めなかった。その後各群ともに術後3日目には速やかに減少,14日目にはB,C群それぞれ0.39【plus-minus】0.2,0.33【plus-minus】0.2pg/mlまで低下したが,A群は0.62【plus-minus】0.4pg/mlに最上昇し,B,C群より有意な高値を示した(p<0.05,p<0.01).28日目にはそれぞれ0.41【plus-minus】0.06,0.37【plus-minus】0.04,0.38【plus-minus】M0.07pg/mlまで低下し,各群間に有意差を認めなかった.14日目に血中HGF濃度が,0.5ng/ml以上の高値,を示す群と,正常値を示す群に分類した場合,高値群ではそのと 血中HGFの変動パターンから考察すると,肝切除により肝細胞に直接ダメ-ジを与えた場合は,明らかにHGFのピーク形成が認められ,肝再生に大きな意義を持つであろうと考えられた.しかしながら,肝再生の最盛期と思われる,14日目あるいは28日目には血中HGFはほぼ正常値に復していた.これは肝組織内におけるの作用機序がendocrineからparacrineへ移行したためと考えられる.14日目における血中HGF濃度と,ICG15分値との相関が認められたことから,障害肝では肝再生が遅延し,HGF高値が遷延したものと考えられた. 尚,臨床的肝切除後の肝再生の画像上の量的再生能,及び動物実験に関しては,データ安定しないため,解析検討中である.
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