研究概要 |
ヌードマウス可移植性ヒト胃癌細胞株を用いて,胃癌腹膜播種性転移の成立機序についてin vitro,in vivoで検討した. ヌードマウス可移植性ヒト胃癌細胞株(TMK-1)および,ヒトの正常胃壁より樹立した繊維芽細胞をおのおの単独培養,混合培養した.その培養上清を用いて,マトリックス蛋白分解酵素(MMP)の発現について検討した.MMP-2の発現についてGelatin zymographyでの検討ではTMK-1単独の培養上清ではMMP-2の発現は認められなかったがTMK-1と繊維芽細胞の混合培養の上清においてMMP-2の発現は認められ,その発現は培養時間に比例して強く認められた.また,免疫染色はMMP-1モノクローナル抗体(金沢大学がん研究所:岡田保典教授より供与)を用いて行ったところ,癌細胞および線維芽細胞より発現が確認された. in vivoにおいてはTMK-1細胞をBALB/cnuヌードマウスに腹腔内投与し腹膜播種モデルを作製した.腹膜播種巣は腹腔内腸間膜に小結節を形成する.腹腔内投与後5週間後に犠牲死させ,この小結節数をcountし評価を行った.TMK-1細胞と線維芽細胞の培養上清を混ぜたものを腹腔内投与したものはTMK-1細胞単独投与したものに比較して有意(p<0.05)に腹膜播種結節数は多く,腹膜播種の形成に癌細胞のみでなく間葉系細胞が関与していることが示唆された.また,腹膜播種結節をホモジネートしたものをGelatin zymographyでMMP-2の発現について検討したところ,強くMMP-2の活性が認められた.
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