研究概要 |
TNFの副作用を軽減して癌治療への応用を検討すべく、TNFによるapoptosisを抑制するNOに対する阻害薬であるL-NAMEを併用してその効果について検討した。 1)In vitroにおいて、Ehrlich腹水癌細胞(1×10^5)にTNF 0,1,10,100,1000ng/mlを加えて,その細胞障害性をLDH release,FCMに検討したところ、TNFは用量依存性に細胞障害性を発揮した。 2)TNF10ng/ml,100ng/mlにiNOS阻害薬であるL-NAMEを0、1、50、100、200μg/ml添加したところ、TNF10ng/mlにおいて、L-NAME1μg/mlで2%、50μg/mlで36%、100μg/mlで31%、200μg/mlで11%TNFの作用を増強し,TNF100ng/mlにおいてL-NAME1μ/mlで0%、50μg/mlで6%、100μg/mlで10%、200μg/mlで8%TNFの作用を増強した。すなわち、iNOS阻害薬を併用することにより、TNFの投与量を減少し、それによる副作用軽減の可能性が示唆された。以後副作用を軽減し、しかも、細胞障害性を発揮する量としてTNF10ng/ml,L-NAME50μg/mlを用いて検討した。 3)DNA-fragmentationについて検討したところ、4時間目より腹水癌細胞にDNA-fragmentationが惹起され、6時間目におけるDNA-fragmentationは33%であった。 4)In vivoにおいて、BCLC/cマウスに3×10^5、5×10^5、7×10^7の腹水癌細胞を接種後、上記のTNF,L-NAMEを体重当たりに換算して投与し、生存率を検討したところ、3×10^5、5×10^5の腹水癌細胞接種群において有意の生存率の延長を認めた。 5)副作用では同様の効果を得るためにTNF量に比較して、L-NAME併用ではGPTの上昇が抑制されていた。 以上より、TNF単独による癌治療では極めて多く発現する正常細胞への障害性をiNOS阻害薬が軽減することが示唆された。
|