雑種犬を用い、全身麻酔下に心表面を露出し、右心房と上大静脈接合部(洞結節近傍)に心筋センシング電極を縫着。これを洞結節電位測定用電極とした(s1)。次に右心房自由壁表面に心筋センシング電極(s2)および心筋ペーシング電極を縫着しアコニチンを塗布したのちバーストペーシングにて心房細動を誘発。次に洞結節とセンシング電極とを含めた領域を径2・5cmのリング状のクライオプローベにて-60°C、10分間にわたり、凍結凝固をおこない洞結節およびその近傍と他の右心房壁とを電気的に隔絶した。 s1およびs2の電位を比較したところ、s2では心房細動が維持されているにもかかわらず、電気的に隔絶された洞結節近傍部のs2は規則性のある洞結節電位(rate120〜140)を示した。自己心拍動下の操作であるため血液温により凍結凝固部位の心筋温の上昇は比較的速やかで、電気的隔絶を維持できる時間に制約があった。凍結温度、凍結時間を様々に変化させることによりある程度安定した電気的隔絶時間を維持することができ、かつその隔絶が可逆的であること(即ち復温によりふたたび洞結節と他の心房筋との電気的連続性が回復する事)が可能になれば細動中の洞結節機能(洞結節回復時間)の測定が可能になると思われる。この臨床応用としては心房細動患者にたいしmaze手術を考慮する際、術後自己洞調律を維持できるか、あるいはペースメーカを要するかの予後判定の一助になると思われる。
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