研究概要 |
実施計画書に示す如く、Brown Norway rat(BN)からLewis rat(LW)へ皮膚移植を行うと同時に、BNの骨髄・脾臓の抽出細胞液をLWの尾静脈に注入し免疫抑制(CYA 15mg/kg,)を3週間行った(group 1)。コントロールとして免疫抑制を行わない皮膚移植を行なった(group 2)。group 1及びgroup 2の皮膚片は、それぞれ平均17.2日、7.8日で拒絶され壊死に至った。最初の皮膚移植から4週目に再び皮膚移植を行った。両群とも免疫抑制をしなかったところ、group 1及びgroup 2の皮膚片の生着期間は平均13.6日、4.4日となり有意差(p<0.01)がみられた。group 1の皮膚片の生着期間は、group 2の初回及び2回目の生着期間に対して有意な延長を示した。言い換えるとドナーの抗原提示と免疫抑制を行うことによりレシピエントに免疫寛容を誘導することが判明した。さらに4週目に肺移植を実施した場合にも免疫抑制をしない状態で、group 1とgroup 2の移植片の生着期間は平均7.6日と2.6日となり有意(p<0.01)な差がみられた。以上の結果から、臓器の移植以前に抗原提示と免疫抑制を行うことで、免疫寛容を誘導でき移植後急性期の拒絶反応を軽減しうることが判明した。現在、臨床における肺移植の成績は移植後一ヶ月での死亡率が約20%と高く、死亡例の大半が術後一ヶ月以内に認められている。本実験に示す如く、移植前に免疫寛容の状態を誘導することにより、移植後の急性拒絶反応の軽減が期待でき、肺移植の成績に貢献しうるものと思われる。
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