研究概要 |
低体温の虚血脳保護作用を,ラット局所脳虚血モデルを用いて二核種オートラジオグラフィー法によって脳血流量とphorbol-12,13-dibutyrate(PDBu)の結合濃度(Protein Knase Cを反映)を測定し検討した。正常体温群(37℃)では虚血脳のPDBu結合の遅延を認め,従来のPDBu結合実験のincubaton時間(60分)では虚血脳の結合濃度が平衡に達しておらず,より長時間のincubation時間(120分以上)が必要であり,虚血脳におけるPDBu結合実験によるオートラジオグラフィー法の至適incubation時間を決定した。また,虚血部(中等度,強度虚血の部位ばかりではなく比較的軽度の部位においても)のPDBu結合濃度は対側に比較して有意な上昇を認め,虚血性脳損傷にPKCの活性化が重要な役割を果たすことが考えられた(Brain Researchに発表予定)。 一方,低体温群(30℃)では,PDBu結合濃度は非虚血側で正常体温群の約90%となり,虚血脳におけるPDBuの結合の遅延は軽度であった。また軽度虚血の部位においては対側同部位に比較して有意な上昇を認めず,中等度及び強度虚血の部位のみPDBu結合部位の有意な上昇を認めた。その上昇も正常体温群の非虚血側程度に抑制される結果であった。 今回の研究より,虚血脳におけるPDBuオートラジオグラフィー法の新しい知見を発表すると共に,正常体温群で認めたPKCの上昇が低体温により抑制されることが,低体温の虚血脳に対する保護作用と関連のあることが推測され,このことについては,今後発表予定である。
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