海馬CA1領域の遅発性神経細胞死のモデルでは、神経細胞死の組織像は典型的なネクローシスとは異なっており、その細胞死の過程でアポトーシスと共通の経路をたどる可能性が考えられている。海馬CA1領域のアポトーシス様神経細胞死と細胞骨格の破壊の関係について、細胞骨格蛋白質のimmunoblottingと、H-E染色による形態の観察、アポトーシスを検出するTUNEL染色、細胞骨格蛋白質の免疫染色を比較し、調べた。 ハロセン麻酔下、砂ネズミの5分間両側総頚動脈結紮による一過性脳虚血を作成した。このモデルでは約4日間かけて神経細胞死が進行する。虚血後8時間、1日、2日にスナネズミ脳から海馬を取り出し定量した後に、immunoblottingで細胞骨格蛋白質の破壊を調べた。lamin、α-actinin、α-tubulin、MAP2、kinesin、dyneinのimmunoblottingではこれらの細胞骨格蛋白質の破壊は見られなかった。spectrinの分解産物は、分解産物の特異抗体で検出できた。虚血後比較的早期には細胞骨格蛋白質の部分的破壊のみ起こっているものと思われた。 また、虚血後、24、48、72時間の再潅流時間後にスナネズミ脳を4%パラフォルムアルデヒドで潅流固定し、パラフィン切片を作った。隣り合わせの切片でH-E染色、TUNEL染色、細胞骨格蛋白質MAP2、チュブリンの免疫染色を行った。TUNEL染色でアポトーシスを示唆する細胞群の形態は、H-E染色では細胞の縮小した虚血性変化を示していた。また、この付近の細胞群では細胞骨格蛋白質は染色できなくなっていた。遅発性神経細胞死におけるアポトーシス様神経細胞死と細胞骨格蛋白質の破壊に密接な関係があると思われた。
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