Halpernらのvideo systemを用い、前年度に続き、正常ラット後大脳動脈において正常クレブス溶液中で、血管内流あり、および無しの状態での血管内圧/血管径曲線を得、実験結果に再現性を認めた。 この実験から、血管内流の存在は脳血管内圧負荷変化時に血管径を一定に保つ機序になんらかの影響がある事が解かった。具体的には血管内圧/血管径曲線における血管径維持レンジがより低圧から始まってより高圧側まで拡大するという結果が得られた。このことは、血管壁のactive tonusの調整に内皮細胞が重要な役割を果たしていることを示唆すると思われる。そこでこの測定条件下に、通気法にて内皮を除去したラット後大脳動脈にて同様の実験を行った。しかしながら、ここでは標本は極めて不安定な状態となり、血管内圧/血管径曲線は一定の傾向は得られなかった。 この実験系の問題点としては、より生理的条件に近付ける目的でorgan bath内のクレブス溶液温を37度に保つためやや高温の液を還流すると、液の変性が起きpH、酸素分圧が不安定となること、室温により影響を受けること、わずかなでも分枝が存在すると、血管内圧、内流を一定に保てないこと等が挙げられる。今後これらの安定化を充分図ったうえで、正常脳血管、攣縮脳血管に対する各種阻害剤の影響を検討してゆきたい。
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