Allenの重り落下変法によるネコ脊髄損傷モデルを用いて大網移植の効果を検討し、次の知見を得た。 1)組織学的に見ると対照群、大網移植群とも1週目で空洞の形成が見られた。大網移植群では空洞の大きさは2週目より縮小し始め、その後も縮小が続いた。一方、対照群では2週目でも縮小が見られず3週以降に縮小した。4週目の両群の空洞の大きさを比較すると統計的有意差をもって大網移植群は対照群より小さかった。 2)移植群では、1週目からfibrous coat(Gold-smith)が損傷脊髄上に生じ、3週以後漸次肥厚し、4週目では、sinusoidに富む滑らかな硬膜に連続する密なfibrous coatとなり、その下にはクモ膜が生じていた。 3)移植群では、3週目にfibrous coatの血管やsinusoidに墨汁粒子が明瞭に認められ、4週目においては髄内の血管にも墨汁粒子が沈着していた。 4)体性感覚誘発電位(SEP)の記録では受傷直後は両群ともSEPは記録されなかった。大網移植群は術後3週と4週に受傷前のSEPと同じpatternのSEPが記録された。 5)これらの成績は大網移植が挫傷脊髄に対して創傷治癒を促進する効果のあることを示唆した。
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