研究概要 |
我々は、Western Blottingで得られたバンドをImage Analyzerを用いてIsoformごとに定量することにより、ヒト神経膠腫においては、神経細胞接着分子(neural cell adhesion molecule,NCAM)の発現は腫瘍の組織学的悪性度、生物学的悪性度(増殖能、浸潤能、播種能)と負の相関関係があることを見い出した。今回我々は凍結切片において抗NCAM抗体による免疫組織染色を行い、NCAMの発現様式を組織学的所見と直接対応させ、Western Blottingでの定量結果を支持する結果を得た。定量において特に著明な逆相関の見られた増殖能との関係を検討すべく行ったモノクローナル抗体MIB-1(Ki-67抗原を認識)と抗NCAM抗体による二重染色では明らかな傾向は認められなかった。 NCAM遺伝子(140kD isoform)の導入効率が比較的良好なヒトグリオーマ細胞U138MG、T98MGを用いて、NCAM140強制発現による腫瘍細胞の増殖能、浸潤能の変化に加え、各種サイトカイン(特に悪性神経膠腫においてover expressionされているもの:Epidermal growth factor(EGF)、Fibr oblast growth factor(aFGF,bFGF)、Platelet derived growth factor(PDGF)等)、プロテアーゼ(urokinase type plasminogen activator,matrix meta lloproteinase 2,9,memb rane type matrix mettaloproteinase)、細胞接着因子(N-cadherin,β1-in tegrin)の発現、活性の増減を分析し、腫瘍の浸潤、増殖におけるNCAMの関与メカニズムを解析中である。 神経突起抑制作用のある挿入配列VASEの、脳腫瘍の浸潤、増殖における意義についても、VASE+およびVASE-のNCAM遺伝子を導入することにより、検討を予定している。
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