(1)マウス未分化肉腫由来のRCT(+)高肺転移株およびRCT(-)低肺転移株の両株において、Zymographyにより、ゼラチナーゼ産生能の差異を明らかにした。各種の線維芽細胞(胎児、皮膚、肺由来)を分離樹立し、線維芽細胞によりRCT肉腫のゼラチナーゼ産生能が調節されていることを解明した。本腫瘍の発生母地である皮膚由来の線維芽細胞とRCT(+)の混合培養は他の線維芽細胞との混合栄養と比較して有意にゼラチナーゼ産生能を上げ、そのゼラチナーゼは105Kdであることを証明した。RCT(+)はRCT(-)と比較し105Kdのゼラチナーゼ産生能により基底膜への浸潤能および遊走能が有意に高くなっており(浸潤能p=0.0047、遊走能p=0.0078)、それが両株の転移能の差の一因となっていると考えられた。 (2)RCT(+)およびRCT(-)と各種の血管内皮細胞との重層培養により、腫瘍細胞の浸潤能の差異を明らかにした。細胞蛍光標識法による接着能では、RCT両株ともに転移の標的臓器である肺由来が高かった。特に、RCT(+)と能由来血管内皮細胞の接着率では60.4±5.2%、肝由来62.8±4.1%、肺由来では70.3±10.4%と有意に肺由来で高かった(p<0.01)。血管内皮細胞の培養上清にたいする遊走能に関してはRCT(-)の場合、各臓器に対し差は認めないが、RCT(+)においては浸潤能と同様に肺由来で有意に高かった(p<0.01)。このことは転移の臓器特異性に関与していると考えられる。また、RCT両株の培養上清中のIL-1、IL-6、GM-CSFのサイトカインをELISA法にて測定し、RCT(+)はRCT(-)に比べサイトカインの自己産生能が多いことを明らかにした。これらサイトカインにより処理された血管内皮細胞は腫瘍細胞との接着率を最大10.3%引き上げた。このことも、両株の転移能の差の一因となっていると考えられた。
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