関節軟骨の損傷・修復過程における成長因子の役割については多くの報告があるが、椎間板軟骨についての報告は少ない。我々は、ラットの傍脊柱筋を切除することで、脊柱不安定性による椎間板変性のモデル動物を作成した。また、その椎間板に成長因子(HGF、BMP、FGF)を投与し、その椎間板を対照群と比較することで、成長因子が椎間板変性過程に及ぼす影響について調査した。 対照群の椎間板は、繊維輪の層状構造の破綻、亀裂の形成、髄核における線維性組織の増生といった変性椎間板にみられる組織像を呈した。一方、HGF、BMP、FGF投与群では亀裂部が軟骨性組織で覆われており、軟骨細胞の増殖が促進されたものと思われた。一方、髄核においても軟骨性組織の増殖が観察された。また、サイトカイン間の比較では、FGFやHGFよりも、BMPの増殖促進能が優れていた。 この研究から、椎間板組織もサイトカインの投与に反応して、細胞増殖能が変化することが示された。この反応が、生体にとって合目的な反応であるか否かについては、脊柱運動単位の力学的強度を評価するなどの、生体力学的研究が必要である。今後、椎間板変性を人為的にコントロールする可能性を追及するべく、細胞学的研究と生体力学的研究の両面から研究を進める方針である。
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