研究概要 |
長大な末梢神経欠損に対する修復法を探る目的で、小神経片を用いた神経移植の実験的研究を行った。神経損傷断端から神経成長因子などが出て神経が再生されるというneurotropism説が最近有力となっているが、シリコンチューブのみでの架橋ではラットにおいて10mmの神経架橋が限界と言われている。そこで神経そのものを損傷中間に留置すればより長い神経欠損を神経架橋できると考えた。 8週齢ウィスター系ラットを用い坐骨神経に15mmの神経欠損を作り以下の実験群を作成した。1群:神経欠損鵜をシリコンチューブを用いて架橋し、その中間部に5mmの小神経片を留置した。2群:神経欠損部を2本のシリコンチューブで架橋し中間部に周囲組織から剥離せず血流を保ったままの小神経片を留置した。術後10週で評価を行った。肉眼的検索、電気生理学的検索および足底筋の湿重量測定を行った。電気生理学的検索は、手術部より中枢側の坐骨神経で電気刺激し、足底筋の表面筋電図と張力計を用いて測定した。併せてコリンエステラーゼ染色を足底筋に行い神経筋接合部での活動の状態を検討した。 肉眼的には1,2群ともに全例神経架橋が得られた。電気生理学的検索において活動電位、筋張力は1群の60%で、2群では全例に認められた。このことから再生神経は肉眼的だけでなく電気生理学的にも再生し得ていたものと考えられた。コリンエステラーゼ染色では、神経筋接合部に染色性が認められ活動性があったものと考えられた。以上より小神経片を用いた神経移植法は、長大な神経欠損に対する治療法として可能性があるものと思われた。 この研究の結果を、第39回日本手の外科学会(平成8年度)において「小神経片誘導による末梢神経移植法 電気生理学的検討を中心として」の演題名で報告した。
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