研究概要 |
四肢に慢性疼痛を有する患者15例を対象とした.本研究の主旨に同意をえて,疼痛部位に一致した分節性筋収縮が得られるように硬膜外刺激電極を装入した.刺激による分節性筋収縮の観察できる部位に筋組織内酸素動態をの近赤外線モニタープローベを装着し,酸素化ヘモグロビン(HbO2),還元ヘモグロビン(Hb),total Hb,チトクロームaa3(Ctaa3)の変化を評価した。 室温27℃で低頻度刺激(1-5Hz)を30分おこなった.15例全例で刺激開始1分で,酸素化ヘモグロビン(HbO2)とtotal Hb(HbO2+Hb)の上昇が観察された.最高値の平均でHbO24.0μMOL,total Hb4.2μMOLの上昇が観察された.同様に高頻度刺激(120Hz)を行ったところ,HbO2とtotal Hbの上昇が観察されたが,その上昇勾配は緩やかで,最高値の平均でHbO2 1.7μMOL,totalHb 1.9μMOLと,低頻度刺激に比較すると上昇程度が低かった.いずれの刺激条件でもHbとCtaa3は変化しなかった.また同時に深部温を測定したが,全例で刺激前より1時間後では,平均0.8℃の上昇がみられた.高頻度と低頻度では温度上昇は差異がなかった. 除通効果は15例中12例(80%)で,低頻度刺激のほうが有効であった.高頻度刺激は刺激開始直後に一過性に電撃痛様の痛みを訴えたものが15例中10例あった.その後はペインスコアで変化がなかったものが8例,70%以上の除痛は1例,30〜70%が4例,30%以下が2例であった.一方,低頻度刺激では,70%以上が4例,30〜70%が7例,30%以下が4例であった.
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