研究概要 |
ディジタルシグナルプロセッサDP1200とパーソナルコンピュータからなるシステムを用い,健康成人の麻酔導入時の聴性脳幹反応を測定し、意識消失との相関をみた。 平成6年度の科学研究費補助(課題番号06771204)のもとで開発した聴性定常反応(ASSR)測定装置を用い,105dBのクリック音を40Hzの頻度で与えたときのASSR強度を記録した。脳波の導出はA1-Cz,A2-Czから行い,100msecのサンプルを200回加算した後フーリエ変換にて40Hzの成分を抽出し,約20秒ごとにASSR強度の記録を行った。同時に20秒ごとに発生するマーカー音に対するレスポンスの有無を記録し,意識の有無を判定した。 イソフルレン、セボフルレンといった揮発性麻酔薬による麻酔導入時のASSR強度の変化についてはすでに平成6年度に報告している。今回は近年臨床に使用されるようになった静脈麻酔薬の一種であるプロポフォールによる麻酔導入時のASSR強度を10名の成人を対象に測定した。測定に先立ち前麻酔は行わなかった。意識消失時(マーカーに対する反応消失時)のプロポフォール投与量は平均1.45mg/kg(投与速度50mg/min)であり,その時点でのASSR強度は覚醒時の約60%であった。揮発性麻酔薬による麻酔導入時の意識消失時のASSR強度は覚醒時の53%(イソフルレン),48%(セボフルレン)であったことから,これら3者の薬物による意識消失時のASSR強度には有意差がないことがわかった。 また,ミダゾラム0.04mg/kgの筋肉内注射による前麻酔は麻酔導入前のASSR強度にほとんど影響を与えないことがわかった。
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