フルオロカーボンに酸素を負荷した後に腹腔内を潅流させる経腹膜的血液酸素化が報告されているが、本研究ではフルオロカーボンを腹腔内に注入した後に酸素を吹送する方法を用いた経腹膜的血液酸素化を検討した。 実験動物として家兎を使用した。気管内挿管を施行し全身麻酔下でPaO_250mmHgになるように酸素濃度を調節し、経頸静脈的に酸素飽和度モニター付き肺動脈カテーテル、大腿動脈に耐圧カテーテル、フルオロカーボンの注入及び酸素と一酸化窒素の吹送と脱気に使用する目的で腹腔内にカテーテルを留置し、血液ガス、心拍出量等の血行動態を測定した。100%酸素10l/分を30分間腹腔内に吹送した後に上記の測定を行い、100%酸素10l/分の吹送を続行しながらフルオロカーボン(FC-43)30ml/kgを腹腔内に注入して30分後に同様に測定を行った。混合静脈血酸素飽和度は連続モニターで観察し、経腹膜的血液酸素化の効果を連続的に記録した。次に、一酸化窒素を吹送中の酸素に加えて同様の測定を行った。 結果的にはPaO_2に10mmHg前後の上昇が認められ、フルオロカーボンを腹腔内に注入した後に酸素を吹送する方法を用いた経腹膜的血液酸素化は動物実験においては可能であると思われた。しかし、問題点として、再現性に乏しく、実験動物の呼吸循環動態の変化に伴う影響も否定できず、フルオロカーボンによる経腹膜的血液酸素化が有意に有効であるとは証明できなかった。従って、血管拡張作用を持つ一酸化窒素を吹送する酸素に加えた時に経腹膜的血液酸素化が増強されるかについてもまだ結論が出せず、今後、実験系の再検討の後に他の種類のフルオロカーボンも使用して更に実験を行う計画である。
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