研究概要 |
【臨床研究1】肝機能障害患者に対する低血圧麻酔が肝血流量および肝機能に及ぼす影響をGSTを用いて評価した。腰椎手術を受ける患者4名を対象とした。亜酸化窒素-酸素-イソフルランで麻酔を行い,トリメタファンあるいはプロスタグランジンE1を用いて平均血圧を50〜55mmHgに2時間維持した。手術開始時,低血圧麻酔終了時,終了1,2,3,4,6時間後に採血してGSTを測定した。GSTは酵素免疫測定法のキットを用いて測定した。その結果,肝機能障害患者に対する低血圧麻酔は,使用する降圧薬にかかわらず,平均血圧50〜55mmHgに2時間維持すると,一過性にGSTの上昇が認められた。この結果の一部については,第16回日本臨床麻酔学会総会(平成8年11月)で発表した(日本臨床麻酔学会誌,16(8),0-233,1996)。 【臨床研究2】肝血流遮断後のGSTの変動を追跡し,現在使用されているAST,ALTと比較した。肝切除術を受ける患者で術中に完全肝血流遮断を行う12名を対象とした。胸部硬膜外麻酔併用の亜酸化窒素-酸素-イソフルランで麻酔を行い,低用量のドパミンを持続投与した。手術開始時,遮断解除直後,解除1,2,3,4,6時間後に採血してGSTを測定した。AST,ALTは術直後,術後1,2,3日目に測定した。その結果,遮断解除直後GSTは全例増加し,その後徐々に減少することが明らかになった。AST、ALTは術直後から徐々に増加し,術後1日目に最大になった。血流遮断時間とGST,AST,ALTは相関しなかった。GSTは,ほかの酵素に比べて,肝血流遮断による肝細胞障害に迅速に反応すると考えられた。この結果については,第43回日本麻酔学会総会(平成8年3月)で発表した(J.Anesth.,10(Suppl.),A227,1996)。
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