ラットの右足底にホルマリン刺激を与え、その後反対側にも同様の刺激を与えた。先行する痛み刺激があると、反対側のc-Fos発現は抑制され、その効果は、脊髄後角の1、2層にのみ見られた。反復刺激のc-Fosの発現の抑制は、最初の刺激から1時間で最大(コントロールの50%)となった。zif-268に関しては、変化はなかった。 先行する痛み刺激によるc-Fos発現の抑制は、μ、δ、κオピオイド受容体拮抗薬(naloxone、naltrindole、nor-BNI)の投与によっても、影響を受けなかった。zif-268に関しては、変化はなかった。 α1受容体拮抗薬のprazosinの投与を初回の痛み刺激の前より行うと、反復刺激後のc-Fos発現の抑制は弱くなる傾向があった。しかし、有意な回復は見られなかった。α受容体拮抗薬のyohimbineでは変化がなかった。これらの受容体の拮抗薬を投与すると、初回刺激によるc-Fos発現は後角の1、2層で増加する傾向があった。zif-268に関しては、変化はなかった。 反復刺激によるc-Fos発現の抑制効果は、時間依存性にみられ、初回刺激後1時間で最大となった。zif-268に関してはこの効果はみられなかった。反復刺激によるc-Fos発現の抑制効果はオピオイドやnorepinephrineの受容体を介して行なわれるものではない。この抑制には、既存の内因性オピオイドや、下行性の抑制系以外のメカニズムが考えられる。
|