敗血症に伴う代謝異常に関与するチトクロームP450(P450)をmRNAレベルで明かにするとともに、これに最も深く関与する炎症メディエーターを求める目的で実験を行った。これに先立ち、肝における代謝酵素の誘導が的確に行われることを確認する目的で、8-9週齢のSprague-Dawley系雄ラットを用いてフェノバルビタールによる酵素誘導を確認したところ、代表的な分子種であるCYP3A2およびCYP2B1が誘導されていることが判明した。またこれらのラットより得られたミクロゾームは、標準物質であるリドカインの代謝活性が亢進していることが判明した。そこで次にE.Coliより得られたlipopolysaccharideを腹腔内投与して敗血症モデルを作成した。このラットにおいては体温上昇、血漿中のc-reacting protein濃度の上昇が認められた。肝よりミクロゾームを作成し、このミクロゾームに対してウエスタンブロット法により抗450抗体と反応させて代表的なP450分子種であるCYP1A、2B、2C、2Dおよび3Aの含量を求めたところ、正常ラットに比べてこれらP450の含量が有意に変化していた。次にいずれの炎症メディエーターによってP450の変化が生じているのかを明らかにする目的で、これらのラットにmurine recombinant IL-1、IL-6、TNF-αを投与した後に経時的に断頭屠殺し、上記の方法に従ってP450量およびmRNA量を定量すした。しかし特定の炎症メディエーターとP450との関係は明らかにならず、これらの炎症メディエーターとはさらに別の因子が関与している可能性が示唆された。
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