研究概要 |
【方法】 5人のSIRS患者を含む10人のARDS患者に対して1-15ppmのNO吸入療法を3-7日間施行した。全例気管内挿管下にServo ventilator 900Cを用いて機械換気した。Mass flow regulatorを介して規定濃度のNO-O2-airを混合投与した。ソーダライムにより吸入NO2を除去し、吸気および呼気中のNO,NO2濃度を定電位電解法で測定した。肺毛細血管圧(Pc)はSwan-Ganzカテーテルのバルーン閉塞時の肺動脈圧波形をコンピューターを用いて、Single exponential法でその曲線を最小2乗適合することにより得た。肺動脈抵抗(Ra)、肺静脈抵抗(Rv)を算出し、2時間のNO吸入前後で比較した。血中硝酸、亜硝酸濃度(PNOx)をGriess法により測定した。 【結果】 NO吸入によりPaO2/FiO2は69.5±23.4から132.8±68.2mmHgに改善した。平均肺動脈圧は35.3±8.8から28.9±7.4mmHg、Pcは22.7±5.6から18.4±3.8mmHgに減少した。Raは170.3±137.1から121.3±66.1、Rvは97.0±85.9から38.9±33.6dyne・s・cm^<-5>に減少した。SIRS患者のPNOxは非SIRS患者と比較して有意に高かった。腎機能正常患者および利尿療法を施行した患者ではPNOxは変化しなかった。持続透析を施行した1人でPNOxが有意に増加した。3人の腎不全患者において、PNOxはCcrの悪化とともに増加し、改善とともに減少した。 【まとめ】 NO吸入療法は、肺酸素化能および肺高血圧状態を改善した。吸入NOはPcを有意に減少し、Ra、Rvをともに低下させた。腎臓からのNO排泄は、NO吸入中のPNOxを決定するのに重要な因子である。
|