揮発性麻酔薬は強い血管作用を有し、麻酔中の生理的臓器血流調節機構を波綻させる。われわれの教室では、揮発性麻酔薬がアセチルコリン惹起内皮依存性血管拡張を抑制し、その抑制が腸管膜動脈よりも大動脈において大きいことを報告し、揮発性麻酔薬の影響が動脈の中枢側と末梢側で異なることを示した。この結果から、内皮由来弛緩物質(NO)による血管弛緩経路以外への麻酔薬の影響が大きいことが示唆された。今回、われわれは、NO同様soluble guanylate cyclase (s-GC)を活性化し動脈を拡張させるCOの作用に対する揮発性麻酔薬の影響を検討した。 【方法】 (1)臓器血管特異性について検討する前に、摘出ラット大動脈を用いて、COによる血管弛緩作用に及ぼす揮発性麻酔薬の影響について調べた。内皮除去リング状標本を作製してKrebs Ringer液中に3gの静止張力で懸垂し、その等尺性張力変化を記録した。フェニレフリン(3×10^<-7>M)にて前収縮させ、CO飽和溶液の累積投与による弛緩反応をハロタン(1MAC、2MAC)、イソフルラン(1MAC、2MAC)存在下、非存在下で記録した。 (2)フェニレフリンで前収縮させた各血管標本において、CO飽和溶液(10^<-4>M)投与後30秒後の血管平滑筋細胞内cyclic GMP (cGMP)の変化をハロタン(1MAC、2MAC)存在下、非存在下でラジオイムノアッセイ法により測定した。 【結果】 (1)ハロタン(1MAC、2MAC)、イソフルラン(2MAC)はCOによる弛緩反応を有意に抑制した。 (2)CO飽和溶液(10^<-4>M)投与によりcGMP量は有意に増加し、ハロタン(1MAC、2MAC)前処置によりこの増加は抑制された。 (3)同様のプロトコールをウサギの各種臓器血管についても試みているが未だ一定した結果が得られておらず検討中である。
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