インターロイキン6(IL-6)のラット骨格筋のグリコーゲン代謝に対する作用について、ラットより遊離したひらめ筋および長趾伸筋の2種類の骨格筋を培養し、IL-6を100または1000unit/ml投与した2時間後の骨格筋内グリコーゲン含量を測定することにより検討した.培養は、酸素電極槽内で酸素飽和度60%以下の低酸素状態と、酸素供給装置により酸素飽和度を95%以上に保った状態の両条件下で行い比較した.結果として、酸素飽和下・低酸素条件下のいずれも、IL-6を投与しなかった群に対しIL-6を投与した群では、培養終了時の骨格筋内グリコーゲン含量が有意に減少しており、IL-6がラット骨格筋グリコーゲン分解を促進することが示された.しかし、培養液中に乳酸を10mmol/lおよび20mmol/l添加すると、このIL-6の骨格筋分解促進作用は抑制され、むしろ非投与群に対しIL-6を投与した群で培養終了時の骨格筋内グリコーゲン含量が有意に増加する傾向を示した.酸素電極槽内で測定した骨格筋の酸素消費量は、乳酸添加により濃度依存的に増加していたことより、組織の乳酸濃度が増加した場合には、IL-6はグリコーゲンより乳酸をエネルギー基質として優先的に利用させ、結果的に骨格筋グリコーゲンを温存させていることが示唆された.このグリコーゲン温存作用は、低酸素状態に比べ酸素供給下で骨格筋を培養した場合により顕著であった.近年、敗血症や手術後などの臨床の場のみならず、過激な運動後にもIL-6の血中濃度が増加することが知られてきており、今回の研究結果は運動生理学的にも興味がもたれた.なお、当初予定したIL-6投与後の骨格筋内ホスホリラーゼ活性の測定は、研究者が平成8年10月に当該研究機関を退職したため、検討されなかった.
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