脳梗塞が排尿に及ぼす影響を検討する前に、正常ラットにおいて脳中枢でニューロキニン(NK)が果たす役割について検討を行った。まず、ケタラールおよびキシラジン麻酔下に、ラット用の定位脳手術装置を使用して正常ラットの側脳室に薬物注入用のカテーテルを挿入留置し、同時に膀胱カテーテルを留置した。その2日後に、より生理的状態での薬剤による排尿への影響をみるために、無抑制無麻酔下の状態で膀胱内圧検査を施行し、膀胱内圧、排尿量、膀胱容量、残尿量を測定した。NK1受容体拮抗薬であるRP67580もしくはNK2受容体拮抗薬であるSR48968を投与したところ、RP67580は20nmol/ratで、膀胱内圧を抑制し、膀胱容量および排尿量、残尿量を増大させた。SR48968も同量で、膀胱内圧を抑制し、膀胱容量を増大させた。両剤ともに排尿を抑制する働きを中枢で持つことが示唆され、中枢領域でも、タヒキニンは排尿に関与するとの結論を得た。 中枢のドーパミン受容体に作用して膀胱活動をおこすと考えられているL-dopaをラットの腹腔内に投与したところ中枢性の膀胱過活動が誘発された。現在、側脳室に投与したNK受容体拮抗薬が、その過活動をどのように修飾するかを検討中であり、脳梗塞による過活動膀胱モデルへの応用も予定している。 以上のこれまでの結論は、中枢性の膀胱過活動の治療にNK受容体拮抗薬の臨床応用の可能性を示唆している。
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