研究概要 |
1)ノルアドレナリンで前収縮させたメスイヌの尿道筋切片は,カプサイシンを投与すると濃度依存性に弛緩反応を示した.この弛緩反応は,nitric oxide(NO)合成酵素阻害剤のL-NAME存在下では抑制され,L-Arginineの追加投与で回復した.経壁電気刺激で生ずるNO作働性弛緩反応に対してカプサイシンは影響を与えなかった.カプサイシンによる弛緩反応は冷所保存後に著明に減弱した. 2)覚醒ラットの膀胱内に生理的食塩水を注入すると,一定の閾値容量を超えると膀胱内圧は律動性収縮を生じた.律動性収縮の存在下でカプサイシン溶液を尿道内に注入すると,膀胱内圧は一過性に振幅の大きな持続性収縮が起こり,その後律動性収縮が一時的に抑制された.閾値容量未満の律動性収縮の生じない状態で尿道内カプサイシン注入を行うと,振幅の大きな持続性の膀胱収縮波が一過性に誘発された.これらの反応はVehicleの尿道内注入では生じなかった.膀胱の律動性収縮に対して,NK1受容体拮抗薬,RP67580の脊髄クモ膜下腔内投与では,容量依存性に律動性収縮が抑制された.NK2受容体拮抗薬,MEN10376の脊髄クモ膜下腔内投与では律動性収縮が抑制されたが,他のNK2受容体拮抗薬,SR48968は有意な抑制を示さなかった.SR48968の脊髄クモ膜下腔内注入時に,カプサイシン溶液を尿道内に注入したが,SR48968による明らかな変化はみられなかった. 以上よりカプサイシンはイヌ尿道平滑筋をL-Arginie-NO系を介し弛緩させ,この反応にはカプサイシン感受性知覚神経末端の関与が想定された.また,覚醒下ラットでは,カプサイシンの尿道内注入は,膀胱の活動性を一過性に促進,その後抑制する二相性の反応を生ずることが示された.尿道内のカプサイシン感受性知覚神経を介すると考えられるこの反応には,脊髄内のNK2受容体が関与する可能性は低いと思われた.
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