尿路結石症患者や結石モデルラットの腎にオステオポンチン(OPN)が強く発現していること、動脈硬化症ではマクロファージがOPNを発現し石灰化を起こすことは報告した。これまでに私たちは、腎結石を持ったヒトの腎尿細管細胞と実験的シュウ酸結石形成ラットの腎尿細管細胞において遺伝子レベルでもOPNとCPTの強い発現を認めており、ヒトのカルシウム含有結石のマトリックスにOPNとCPTの存在を証明した。また、腎結石を持ったヒトの腎だけでなく実験的シュウ酸結石形成ラットの腎においてもマクロファージが尿細管細胞の周囲の間質に遊走してきており、それは、結石の形成やOPNの発現が増強するよりも早期に遊走していた。そして、ヒトの腎と結石形成ラットの腎においては、炎症性サイトカインである1L-1、1L-6、TNFα、TGFβの発現が認められ、結石ラットではマクロファージの出現よりも早期に炎症性サイトカインの発現を認めている。また、細胞接着分子のICAM-1の発現もサイトカインと同時点で認められた。以上の結果から、OPN、CPT、MGP、マクロファージ、サイトカインが結石形成の初期の段階から重要な役割を果たしていることが示唆された。 臨床的に尿路結石症の原因の一つに骨代謝異常が示唆されている。骨粗鬆症の治療薬として臨床応用が始まりつつあるビスフォスフォネートとエルカトニンに着目し、実験的高カルシウム血症ラットにビスフォスフォネートを同時に投与したところ遺伝子レベル、蛋白質レベルでOPNの発現を抑制することを見いだした。さらに、その機序は、プロトオンコジーンc-srcの発現物質であり細胞内のsignal transductionにあずかるSrcチロシンキナーゼの活性を抑制することでOPNの発現を遺伝子レベル、蛋白質レベルで抑制することが示唆された。
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