哺乳類においては、胚の着床を成立させ得る子宮内膜の受容期間(Implantation Window;IW)が存在する。生殖医療における難治不妊症例では、胚の子宮内膜への着床が阻害されているものと考えられ、IWが閉じた状態として組織されている。このIWの成立に子宮内膜の分化が密接に関連していること、またその分化過程に免疫因子が深く関与していることが明らかとなってきている。着床障害という現象を子宮内膜分化過程での内分泌因子と免疫因子の相互作用における機能不全状態としてとらえ、着床機構および着床障害の病態の解析をマウス胚移植実験系を用いて免疫学的側面より試みた。その結果、ICR系マウス胚盤胞の子宮腔内移植において、子宮内膜間質内の免疫担当細胞数の増加を期待し、妊娠4日目マウスの脾臓由来免疫担当細胞(似下、脾細胞と略す)を胚移植後にrecipient静脈内に大量投与したところ、偽妊娠1日目および2日目の完全にIW閉鎖している時期に、偽妊娠1日目で27.8%、偽妊娠2日目で85.0%のrecipientにおいて移植胚の着床を認めた。さらに妊娠マウス脾細胞の子宮内膜間質内への直接投与によっても、同様の着床促進効果が確認された。また、非妊娠マウスの脾細胞投与ではこの着床促進効果はほとんど認められなかった。この理由は不明であるが免疫担当細胞の着床促進効果は妊娠により増強されることが堆定された。次にマウス胚の着床において不可欠とされており、estrogenにより誘導されることが報告されているLeukemia Inhibitory Factor(LIF)の子宮内膜における発現について検討したところ、妊娠マウス脾細胞の静注によりLIFmRNA発現の増強が誘導された。上記の現象のメカニズムを検討することが、今後子宮内膜の分化渦程および着床機構を解明するカギとなると思われる。
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