妊娠中毒症で産生の亢進がみられるFree radicalに注目し、臍帯動脈血管のSerotonin(5-HT)による血管収縮に及ぼす効果と血管トーヌス維持に及ぼす効果について検討し、以下の成績を得た。 まず、臍帯動脈血管の5-HTに対する収縮反応に及ぼす血管内皮由来の収縮及び弛緩性物質の関与を、nitric oxide(NO)、prostacyclin(PGI_2)、Thromboxane(TBX)に注目し検討した。NOの産生阻害剤であるLNAME、作用阻害剤であるmethylen blueを前処置することで5-HTによる収縮は著明に増強し、NO産生基質であるL-Arginineを前投与することで5-HTによる収縮は有意に抑制された。一方、PGI_2、TBXの産生阻害剤であるtranylcypromine、sodium ozagrelを前処置した際には5-HTによる収縮には明らかな影響はみられなかった。即ち、5-HTによる収縮には特に血管内皮細胞由来のNOが強く関与していることが明らかとなった。 次に、細胞障害活性の強いhydroxyl radicalの産生源としてH_2O_2を前投与すると、5-HTによる収縮は増強し、hydroxyl radicalのscavengerであるmannitolを前処置することで、H_2O_2のVasospastic作用は抑制された。又、L-Arginineを前投与することで、H_2O_2のVasospastic作用は有意に抑制された。従って、hydroxyl radicalによるVasospastic作用は内因性のNO産生を障害することが一機序であることが強く示唆された。 更に、prostaglandin F2_αによる収縮モデルを用い、血管トーヌスに及ぼすNO、PGI_2、TBXの影響を上記の産生阻害剤を用い検討した。LNAME、tranlcypromine投与により張力の有意の増加が示された。Tonic contractionに対しては、NO、PGI2が強く関与していることが明らかとなった。又、H_2O_2の負荷により血管のトーヌスの増強がみられ、LNAME、tranylcypromine前投与では、H_2O_2によるVasospastic作用は有意に減弱された。即ち、Free radicalによる血管トーヌスの増強効果は、内因性のNO、PGI_2活性を障害する機序に基づくことが示唆された。 以上の検討から、Free radical負荷によりphasic、tonic contractionに対するVasospastic作用が明らかとなり、妊娠中毒症の血管のVasospasm発症にFree radicalが強く関与していることが示唆された。更に、このFree radicalのVasospastic作用は血管内皮由来のNO、PGI_2産生を障害することによる機序が強く示唆された。
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